タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


 <本日のツボ125>
    『大局観を持とう』

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<ツボの説明>

  いつも資金繰りで苦労している中小企業者や創業者を支援する
 目的で、そのような会社に資金を投資するファンド型の支援施策
 が実施されています。

  従来から「融資」という形で創業や新規事業を支援するという
 施策はたくさんありましたが、近年では「投資」という方法もそ
 の重要度を増してきています。

  そこには、「膨大な個人資産が産業向けのリスクマネーとして
 活用されるようになれば、マネーの使途として効率的であり、経
 済の活性化につながる」という理屈があります。

  一時期話題になった「エンジェル税制」といった施策も、個人
 資産をリスクマネーに向かわせる方策の一つです。

  この理屈はたしかにその通りで、企業側にとっても資金の調達
 源が多様化することはあながち悪いことではありません。


  こういったことには、わが国の経済の規模および構造が、金融
 機関だけではそのリスクを担保しきれない状況となっていること
 を受けたものであるという側面もあります。

  先のバブル崩壊によって大量の公的資金が金融機関向けに投入
 されたことは、民間金融機関は「民間」と注釈がつくものの、そ
 の実態的な性格は公的機関であることを明らかにしました。

  そしてその公的な金融システムが、産業のリスクを「融資」と
 いう形で一手に引き受けることは(彼らにとって)不公平なので、
 リスクを他の人にも引き受けて欲しいといっているのです。

  そう、「投資」の奨励には明らかに、ベンチャー企業などのリ
 スクが高い資金需要に対して、民間の個人資産をそのリスクマネー
 に充当してゆくための施策という意味合いもあるのです。


  中小企業にとって「株式の上場」はさまざまなメリットとデメ
 リットをもたらします。

  プライベートエクイティによって資金を集めるなどといったこ
 とは、常に資金繰りに頭を悩ませている中小企業経営者にとって
 は夢のような話です。

  また、成功するかどうかわからない新事業を実行するための資
 金を、自分ひとりではなく多数の投資家に出し合ってもらうこと
 には、リスク分散という株式会社の本質的意義があります。

  反面、社外株主が増えてくるにつれ、ガバナンスの問題に直面
 します。創業オーナー社長にしてみれば、会社が自分のものでは
 なくなってゆくのです。

  また必然的に「常に自社の価値を実際よりも高く見せかける努
 力」を要求されるようになります。株主からの要求という要素も
 さることながら、企業価値を実際よりも低く見積もられてしまっ
 た場合、敵対的買収の危険にさらされるからです。この点は、そ
 の会社の実態が優良な企業ほど顕著です。

  粉飾とまでは行かなくても、会計情報の恣意的な操作に対する
 動機を制度的に内包してしまうのです。


  また、経験から言うと「最終的には株式上場を目指します」と
 いって作成されるビジネスプランは、途中で頓挫するケースが多い。

  顧問契約を一番引き受けたくない案件がこの「上場を実現した
 いので相談にのって欲しい」というやつです。


  投資家が上場によるキャピタルゲインを期待して事業に資金を
 投入することは悪いことではありません。

  しかし、ビジネスというのは基本的に長期スパンで考えるべき
 ものだと思います。そして、長期スパンで見た株式相場というも
 のは、マクロ経済の成長とリンクしています。


  投資家が期待する投資収益率は、マクロ経済の成長率をうわま
 わります。リスクがあるのですから当然です。基本的に短期資金
 なのです。

  なので、投資と実体ビジネスとの間にはコンフリクトがあるの
 が自然な状態なのです。


  こういった見方は私固有のものであり、普遍的な見方とはいえ
 ないものです。

  しかし、このような独善的な大局観を持たないと、自身の美意
 識に従った判断ができません。

  自身の美意識に従うことが、精神の安定を保つ上ではとても有
 効だと考えているので、こういった大局観は大切にしています。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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