タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

  2006年8月1日


 <本日のツボ161>
   『デフレ脱却に差し掛かるにあたり』

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<ツボの説明>

  景気動向一致指数が3ヶ月連続で50%を上回るなど、全般的
 な景気回復を示す傾向が続いています。

  これは当然喜ぶべきことですが、ちょっと気をつけてみておき
 たいことがあります。


  消費者物価指数が6月までの3ヶ月間連続で前年同期を上回り
 ました。

  「デフレ脱却」というわが国経済当面の課題が解決に向けて動
 き出したと見ることもできますが、まずいことに企業物価指数は
 28ヶ月連続で前年を上回っています。

  しかも、6月の数字で言うと、消費者物価指数のほうが前年比
 +0.6% だったのに対して、企業物価指数は同+3.3%と
 上昇幅に差があります。

  これは、今回の「デフレ脱却」のメカニズムが、民間の消費意
 欲が活発になったことによって需給が引き締まり、物価がゆるや
 かに上昇するという「マインドプル・インフレーション」ではなく、
 エネルギーや原材料等の値上げによって製造コストが上がり、
 その結果物価に上昇圧力が加わっている「コストプッシュ・イン
 フレ」であることを意味しています。

  受給が引き締まっていないということは、自然な消費増による
 稼働率の上昇や在庫の減少はあまり期待できないということです。


  まだまだ予断を許さない局面ですので、在庫計画などは今まで
 以上に慎重に策定する必要があります。

  企業物価(つまり仕入れコスト)が大幅に上昇していますから、数量
 ベースで同じ在庫を抱えていたとしても、金額ベースでは2年前よりも
 20%以上上昇している可能性があることに留意してください。

  売価還元法など、売価ベースで在庫評価を行なっている会社の
 場合、貸借対照表上の在庫評価額の増分と実際の投下資金の増分
 とがリンクしませんので注意が必要です。


  これを考慮しなかったために資金ショートに陥っている企業が
 目立ち始めています。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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