タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


 <本日のツボ165>
   『インフレーションに備えよう』

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<ツボの説明>

  経済環境や社会状況を「循環的である」と主張する人たちが
 いて、彼らによると、今の状況は1970年代、あるいは1930
 年代に似ているという。

  こういった諸説の真否はともかくとして、30年前や70年前
 の現実と比較した場合、共通する面と異なっている面を冷静に見
 極め、備えをする心構えは必要となってくる。


  たとえば、共通点としていえるのは、世界的な規模で天然資源
 の争奪戦が始まっていることなどがある。

  一方、資源以外の生産物に関してはあいかわらず供給能力が需
 要を上回っている状態が続いており、資源の問題があらゆる物の
 供給不足に結びついて行くという現象は起こっていない。

  こういったことが、原材料価格の上昇速度と生産品販売価格の
 上昇速度の差となって現れている。


  ここで問題となっているのは「労働力コストの高さ」ではない
 ので、「生産拠点を海外シフトすることによってコストダウンを
 はかり競争優位を築く」という戦略は、有効性が低くなる。

  世界の各地域で経済システムの開放度が高くなりつつあること
 もこの傾向に拍車をかける。

  言い換えると、「中国や東南アジアで安く作る」という方策は、
 もはや「誰にでもできるやり方」であって、差別的な強みとはな
 りえないということ。


  「価格競争に対応するために、生産拠点を海外に作りたい」と
 いう会社は相変わらず多いし、実際に工場作りを計画して実現さ
 せることも難しくはない。

  しかし、その海外工場を日本市場での強みにしてゆくことは、
 かなり厳しい仕事になってきている。

  インフレリスクが高まる可能性があるときに、デフレ対策を実
 施するような行動はあまり意味がないということである。


  1970年代の石油危機からわが国の経済がいち早く復活しえ
 たのは、他国に先駆けて資源やエネルギーの利用効率を高めるこ
 とに成功したからだといわれている。

  今直面しているエネルギーや資源の問題は、労働コストの問題
 と違って、「日本よりも鉄や石油の安い国で生産すればよい」と
 いう解決策は現実的ではない。

  エネルギー・資源の利用効率を高めることしか競争優位を獲得
 する手段がないのである。


  当たり前すぎて「いまさら何を・・・」というレベルの話なの
 だが、絶好調トヨタでさえ、戦略の基本がそこにあることに気付
 くべきである。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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