タイトルロゴ大山祐史の経営コラム


 


   <本日のツボ277>
    『ふたつの教訓』

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<ツボの説明>

  「一族でない者と同等の能力をもち、同等以上によく働くもの
 以外は同族会社で働かせてはならない」
 
  P.ドラッカーは、会社の大部分は規模の大小に関係なく同族
 会社である ということを認識した上でこのように指摘しました。
  さらに、「できの悪い甥を働きに来させるくらいなら、働きに
 来ないよう金をやった方が安くつく」と続けています。

  たしかに会社の大部分は同族会社です。そして一族の者の処遇に
 悩んだり、実際に苦労をしている経営者はとても多いものです。
  現実的には「働きに来ないようにするために金をやる」という
 わけにはいかない場合が多いし、よほどの大家族でもない限り、
 苦労して後継者を育てなければ事業の継承すらできなくなってしま
 うことになりかねないからです。
  「働きに来ないように金をやる」方法には、いつまでたっても
 後継者ができない会社となってしまうリスクがあるのです。

  ここでは必要以上に厳しい立場に配置してしごいたり能力以上の
 権限を与えてしまうような処遇が起こりがちですが、それらは
 どちらもあまり得策とはいえない「特別待遇」です。

  前者は、本人の受け止め方次第では能力開発の面でマイナスと
 なる可能性があるし、後者では当然 一族以外の社員のやる気を
 大きく削いでしまうことになります。

  結局は、一族の者もそうでない者も同じように扱うしかないと
 いうことです。もう悩むのはやめて、会社にとって最適であると
 思われる配置と処遇を行ないましょう。

  そういう対応をしている会社ほど、うまく後継者が育ち他の社員
 との確執も少なく、事業継承がスムースに進んでいるように見受け
 られます。

  ドラッカーも結論としては『「同族会社」という言葉で鍵となる
 のは「同族」ではない。「会社」の方である。』と結んでいます。


 ↑ここまでは一年以上前の「経営虎の穴」2006年1月18日
 号の焼き直しです。
  また、昨年の12月15日号には次のような話を書きました。


  金銭を介さないで人を使う方法は一つしかありません。
 それは、相手の尊厳を守ってやること です。

  人は自らの尊厳を守るために働きます。

  人並みの生活をする とか 家族を養う といった様なことも、
 つきつめればそれは、社会人としての尊厳や、夫・父としての尊厳
 を守るためということになります。

  尊厳を守るために必要なことは「自分の存在が認知されている」
 と実感することです。

  この「自分の存在」は、通常「自分はだれかの役に立っている」
 というプラスの実感として認識されます。

  よって、人は自分の尊厳を守らせてくれる人を重視し、その人に
 とって役に立つことを行ないたがります。

  逆に、こういったプラスの実感が得られないとき、人間は自分の
 存在を誰からも認知されていない状況に耐え切れなくなる場合が
 あります。

  そのような感情は通常、潜在意識の中に蓄積されますが、潜在
 意識は何らかの行動や現象となって表面化しようとする圧力を持っ
 ています。認知されていないという状況から脱するために、自分や
 他人にマイナスの影響を与えようとすることがあるのです。

  それが自分に向けられたときには、病気や事故、自傷事件となっ
 て現れ、他者に向けられたときには、非行や犯罪に結びつきます。

  他人の尊厳を守れないリーダーがいる組織では、人が働かない
 ばかりか、病気や事故、事件が多くなる可能性さえあるという
 ことです。(←12/15の引用はここまで)


  この二つの問題意識が事件となって現実に表れたのが、今回の
 不二家の事件です。

  一説によると「不二家」とは、藤井家の藤と日本一の山富士に
 由来する屋号「ふじや」に、「ふじやには藤井家以外の家の存在は
 許さない」という意味を込めて「不二家」という漢字を当てたのだとか。

  その社風は創業時から現在に至るまで「藤井家とその使用人たち」
 という位置づけが明確であり、いまだに社員のことを「職人」と
 よぶ習慣として残っているのだと。

  1986年に就任した5代社長の藤井俊一氏は、この社風を悪習
 ととらえます。能力主義を貫き一族以外からも多くの取締役を抜擢
 したのですが、それが守旧派の怒りを買い先代、先々代ら(全部
 藤井さん)の謀議により1995年に解任されてしまいます。

  この解任劇をきっかけに、藤井家以外の会社幹部や社員たちの
 あいだに「不二家に能力主義を根付かせることは不可能だ」という
 あきらめの認識が広まりました。

  このとき、能力や貢献を正当に評価されることによって守られる
 べき社員たちの尊厳は、もろくも崩れ去ったのです。

  尊厳を失った社員たちがその後、自らの会社に対する誇りや愛着、
 製品にこめられたプライドや自信といったものを取り戻すことは
 ありませんでした。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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