タイトルロゴ大山祐史の経営コラム



   <本日のツボ284>
    『ファクト主義』

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<ツボの説明>

  最近「虚構と現実」の境界がわかりにくくなっています。

  ドラマでも、SFチックな作り話はエンタテーメントとして楽し
 めますが、より大きな感動を与えられるのは、完全なフィクション
 ではなくて現実にありそうな日常を切り取って仕立てたストーリー
 の方です。

  好き嫌いはあると思いますが、NHKの連ドラや大河ドラマが
 これだけ長寿で支持され続けているわけは、取材や時代考証、地域
 研究などにより、現実感を追求し続けているからに他なりません。

  人は現実感に共感するのです。だから「あるある大辞典」という
 ネーミングは、人間の「そうそう、あるある」という日常への共感
 を捉えたネーミングとしてなかなか的を得たものだったのですが、
 中身が捏造だとわかり、すっかり白けたものと成り果てました。

  ドラマでも情報番組でも、現実っぽい虚構を見せられ続けている
 せいで、その境目がわかりづらくなってきています。


  報道番組といえども、映像として伝えてくるのはテレビ画面と
 いう枠に切り取られた狭い範囲だけです。

  ちょっと古いハナシになりますが、阪神淡路大震災のときに
 テレビ画面が伝えてきたのは、横倒しになったビルや押しつぶされ
 た建物、激しく燃える街の様子でした。

  私は、あの地震の1年ほど前まで、神戸市の東灘区というところ
 に住んでいたので、よく見知った街や建物が大変なことになって
 いると驚愕したものです。

  ところが、何ヶ月か経ったあと実際に訪れてみると、街には激し
 く破壊された部分と見かけ上はほとんど被害の無い部分が混在して
 おり、現実としては大きな被害を受けたようには見えない(以前と
 何も変わっていない)部分のほうが多いということがわかりました。

  被害の激しさを伝える画面だけを見ていると「壊滅」ではないか
 と思えたような街が、大部分は平然と元通り存在していたのです。


  物事を理解し判断する上で大切なことは、自分の目で事実は何で
 あるのかを確かめようとする姿勢です。

  たとえフィクションの時代小説であっても、取材を重ねて事実を
 研究し、それが反映されているものは共感と感動をよぶことができ
 ます。

  ドキュメンタリー番組がおもしろいのは、純粋に事実だけを集め
 て並べただけのものだからです。

  二次データの収集でも、実際に実験を行なって一次データを得る
 ことでもかまいません。大切なのは徹底的に事実を集めてそこから
 得られるものを探すことです。この現実にこだわることをファクト
 主義と呼んでいます。


  人は現実感が伝わってくるものに共感し、ひきつけられ、感動
 するものです。だから、ビジネスにおいてもファクト主義は有効
 であるといえるのです。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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