タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


 <本日のツボ154>
   『卸し業再生のポイント』

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<ツボの説明>

  リテールサポート機能を強化することによって生き残りを図ろ
 うという動きが、一部の卸し業にみられる。

  ABC(Activity Based Costing)によるコスト負担を小売側
 に求めることが可能なのであれば、リテールサポートなどの機能
 は、メーカー・小売間の商流を仲介してマージンを得る以外の収
 益源として有効となるはずである。


  ところが実際には、「本業の卸し売りでは利益が出ないので、
 リテールサポートの機能を充実させて収益の向上を狙ったが、思っ
 たような効果が出ない」というケースが多い。


  こういったケースでは、ほとんどの場合「ターゲットのミスマッ
 チ」が起こっている。

  卸し業者にサポートを要求する小売店側に、そのサポートに対
 してコストを負担する意識がほとんど無いのである。


  取引先の量販店に依頼されて、品揃えや棚割り(売り場での商
 品陳列の仕方を決定すること)を手伝っても、その見返りとして
 現金を得られることはほとんどない。

  そもそもこのようなサポートを要求する小売店というのは、コ
 スト志向が強く自社の売り場要員も極小化している傾向がある。

  したがって、人手が足りないために売り場作りを卸し業者に依
 頼することがあったとしても、それにかかった費用を支出して、
 自社の原価に上乗せしようなどとは全く考えていないのだ。


  つまり「小売サポートによって収益を得ようとしている卸し業
 者」に対して、そのようなサービスを実施してもらいたいと思っ
 ている小売業者は、「余計なコストは一銭も支払う気がないコス
 ト志向型小売店」であることが多いのである。


  一方、より高額な商品や利益率の高い商品を売ろうとしている
 小売店は、店舗の諸機能がそのような商品を販売する上で非常に
 重要であることを認識しているので、ある程度のコストを負担し
 てでも店頭の高機能化を実現したいと考える。

  品揃えや展示方法などの工夫が自店にとって貴重なノウハウで
 あることを知っている。

  知っているがゆえに、それほど重要な部分を、簡単に卸し業者
 に任せたりはしない。


  「リテールサポート機能」を収益源にしようと考えている卸し
 業者は、そのようなサポートの価値を認めてコストを負担する意
 志がある小売店以外を取引先としてはならないということである。

  「安売り」だけを競争手段としている小売店に対して、そのよ
 うな取り組みを続けてはならない。

  その上で、価値を認めることができる小売店に対して、「小売
 店自身では実現することができない小売店舗高付加価値化サポー
 ト」を提供する必要がある。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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