タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


   <本日のツボ232>
     『感動が強い』

-------------------------------------------------
<ツボの説明>

  消費者は感情を揺さぶられるとサイフの紐が緩む、というのが
 一昨日からのテーマだったが、このことを利用した手法はすでに
 色々な業界で活用されている。

  「それをビジネスに応用している事例」というと語弊があるが、
 「振り込め詐欺」はこの手法の典型例といえる。

  電話をかけた相手の感情に揺さぶりをかけ、心配でどうしようも
 ない状況に追い込んで大金を支出させるという手口。

  この手の犯罪に引っかからないための対策として「実際に振り
 込む前に、冷静になって、他人に相談するのがよい」といわれて
 いるが、これはすなわち、崩された感情のバランスを立て直して
 安定させろと言っている。感情が安定している状態では、むやみに
 サイフから大金を取り出すということはしないのが普通だからだ。


  この「心配」という感情に揺さぶりをかけるやり方は詐欺以外に
 もよく見かけるものである。

  代表的なのが「防災商品」「防犯用品」「保険」といった商材
 である。

  「万が一今あなたが死んだら、残された家族が必要とする生活費
 や教育資金の総額は3億円です」

  こういってものすごい生命保険を勧められたことがあるけれど、
 このときは「残された家族への心配」よりも「こんな保険に入った
 らいつ毒を盛られるかわからん」という恐怖の方が大きかったおか
 げで契約には至らなかった。


  実際には、心配をあおることで契約を獲得するやり方は永続性の
 あるビジネスモデルにはならない。

  「万が一の事故」や「若くして死亡する」といった心配事が現実
 に起こらなかった場合、顧客心理に認知的不協和が生ずるからで
 ある。認知的不協和とは、購買後にその商品に対して「しまった、
 こんなはずではなかった」とか「もっと良い選択肢があったはず」
 といった不満足心理が生じること。これを感じる顧客が多くなって
 くると、いずれは社会全体に「買ってはいけない商品」「必要の
 ない商品」という認識が広まることとなる。


  ビジネスの永続性を考慮した場合、励起するべき感情はやはり
 なんといっても「感動」である。

  顧客に感動を与え、感動したお客さんの声や映像をマーケットに
 提供することによって、その感動を共有してもらう。ありきたり
 ではあるが、ビジネスのツールとしては「感動」の方が強い。

-----------------------------------------------
 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


  本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
 限りにおいて、引用・転載は自由です。