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 <本日のツボ25>
   『コストリーダーシップ』

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<ツボの説明>

  「コストリーダーシップを握る」という言葉があります。

  教科書的に言うと、「業界内でコスト優位を獲得すること」
 と説明できるのですが、この言葉は誤った解釈をされること
 があります。

  意外と多くの経営者が、せっかく獲得したコストの優位性を、
 「より安く販売するための原資」にして浪費しています。

  「コストリ−ダーシップ」はもともと、収入が同じであれば
 最少コストを実現したときに最大の利益が得られる、という
 あたりまえのことを表現しているに過ぎません。この時点で
 「収入が同じ」という条件がつけられていることに注目して
 ください。

  つまり「商品の品質や機能が変わらず、同じ価格で販売する
 ことができるなら、仕入れコストは低いほど利益が大きい」と
 言っているだけなのです。

  ですから「同じ価格で販売する」という条件を放棄してしま
 うと、「利益が大きい」という結果も放棄することになります。


  安売り競争が会社にまったく果実をもたらさないということは、
 みなさん既に十分お分かりになっていると思います。

  安売り競争にはゴールがなく、誰か一人を除いて他の競争者
 が全員棄権してしまうまでつづきます。長期戦になれば、最後
 の一人さえもヘトヘトになってしまい、残ったのは疲労感と
 借金だけ、ということさえあります。

  それでもこのような勘違いが後を絶たないのはどうしてなの
 でしょうか?
  そのひとつに「利益率と利益額のとりちがい」があげられると
 思います。

  会社にとって重要なのは言うまでもなく「利益額」の方です。
 ところが、業種・業界によっては「値入」「仕切り」「掛率」
 などといった名称で、一種の利益率を取引判断の基準として用
 いていることがあります。
  この思考方法に慣れきってしまっていると、次のような事態が
 起こりえます。

 いままで4千円で販売していたA商品は利益率が30%でした。

 今年からA商品の製造を中国の会社に依頼するようにしたとこ
 ろ、原価がいままでの半分に下がりました。

 そこで営業部はA商品の利益率を40%に引き上げて販売する
 ことにしました。

 この年、会社は赤字に転落しました。

  理由は簡単です。
 結果的に、この営業部は安売りに走ってしまったのです。
 A商品1個あたりの利益率は30%から40%へと上昇してい
 ますが、販売価格が下がったため、1個当たりの利益額は2割
 以上も減少してしまったのです。


  コストリーダーシップを実現するに当たって、気をつけて
 おかなければならないことは、「コストと収入を連動させない
 ようにする」ということです。

  しかし「中国製に切り替える」という方法では、コスト低減
 はできても、販売価格の維持はたいへんむずかしいというのが
 現実です。

  コストリーダーシップという言葉が考え出された当初に想定
 されていた手法は、規模の経済性(量産効果)を利用すること
 によって、品質も機能もそこなわずにコスト低減を実現する、
 というものでした。

  そういう意味で、「コストリーダーシップを握る」ことを目
 指すという方向性は、中小企業よりも大企業に向いた考え方で
 あるということができるのです。

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