タイトルロゴ大山祐史の経営コラム



   <本日のツボ283>
    『損得計算と損益計算』

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<ツボの説明>

  伝統的な会計手法による損益計算では、会社・事業部・製品別
 などの単位で一定期間の損益を計算している。

  このとき、人件費や設備費などの固定費はある一定の基準に従っ
 て配賦されることになるのだが、この基準いかんによって損得計算
 の結果が変わってしまうことがある。

  損得計算とは「やめるか続けるか」とか「どちらを生産するか」
 といった意思決定をする場合に、「どちらの方法が得であるか」を
 見極めるための計算である。


  たとえば、ある工場で生産している製品がAとBの2種類だった
 とする。この工場では、一日にABあわせて2個生産することが
 出来る。
  普段の生産数量は、A、Bそれぞれ1個ずつである。

  販売価格は    Aが1000円 Bが3000円である。

 材料費などの変動費はAが 400円 Bが1600円である。

 人件費などの固定費は総額で2000円であるが、これをこの工場
 の経理課員は変動費の比率で配賦することにした。その結果負担
 する固定費は、   Aが 400円 Bが1600円となる。

  費用の合計は   Aが 800円でBが3200円という
 ことになった。

  以上のことから、普段の日のA、Bそれぞれの利益は、損益計算
 によるとAが200円の黒字、Bは200円の赤字ということに
 なった。AとBを1個ずつ生産する普段の日は、収支がチャラで
 儲かっていないということである。


  そこで工場長は部下を集めて「利益を出すための生産計画を考え
 てくれ」と命じた。

  部下のYさんは「赤字のB製品の生産をやめて、Aだけを作る
 ようにすべきだ」と主張した。

  部下のZさんは「安い値段でしか売れないA製品なんか作らず
 に、Bだけを作った方が良い」と言い張った。

  あなたならどちらの意見を支持するだろうか?

  答えは簡単。
  Aだけを2個作った場合、売り上げは2000円であるのに対
 して、変動費が800円、固定費が2000円かかるのであるから
 800円の赤字である。

  一方、Bだけを2個作る場合は、6000円の売り上げに対して
 変動費は3200円、固定費は同じく2000円なので、差引で
 800円の利益となる。

  よってZさんが正解。


  一見、赤字の製品だけを作るのは間違っているように感じる。
 しかし、ここで言っている赤字とは、便宜上固定費を配賦して損益
 計算をした結果に過ぎない。

  損益計算とは、実績を元に固定費をできるだけ公平になるように
 事業部や製品別に割り勘した「実績の成績表」であって、「将来
 どうした方が得か」ということを判断する損得計算とは、まったく
 別のものなのだ。

  したがって、損益計算をベースに「この事業はやめるべきだ」
 とか「こちらを選ぶべきだ」といった判断を下すのは間違いの
 もとだということが出来る。


  損得計算は「やったとしたら」「そちらを選んだとしたら」と
 いう前提をもとにした未来予測の比較であり、シュミレーション
 によって「相違が出る部分」の比較を行うことである。

  単純な理屈のようだが、この勘違いによって間違った判断を下し
 てしまうことは意外と多い。

  実際の会社の損益計算は割り勘の仕方や考え方が非常に複雑
 なので、でその影響を取り払って純粋に「相違が出る部分」だけを
 計算することが、結構難しいからだ。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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