タイトルロゴ大山祐史の経営コラム



 <本日のツボ139>
   『殿様商売の意味』

 ------------------------------------------------
<ツボの説明>

  本物の殿様も、家臣や領民を大切にし、急場にあたっては自身
 の犠牲をもいとわない者が「名君」とたたえられました。


  「殿様商売」という言葉の意味は、傲慢に振舞いながらの商売
 ととらえられていますが、ここでは少し見方を変えて、名君と呼
 ばれた殿様の姿に近いものと考えましょう。


  商売が成立したときに、売り手の側が「ありがとうございます」
 と感謝の言葉をいうのはあたりまえのことです。

  買い手の側はどうでしょうか?

  ここで買い手が「買ってやったのだから感謝されて当然」とい
 う感情を持っている状態は、どちらにとっても「殿様商売」とは
 いえません。


  買い手が「買ってやった」という感情を持つのは当然のように
 思われることがあるかも知れませんが、これはビジネスマンとし
 て能がある者の感情ではありません。

  購買担当者の職務は、「自社の利益が最大になるように仕入れ
 を行なうこと」です。この「利益の最大化」を実現するための要
 素には、品質・価格・仕入ロットなど様々なものがありますが、
 「自社のお客様にとって価値のあるものを仕入れること」が最も
 重要です。

  購買を実行したときに「買ってやった」という感情を抱くとい
 うことは、「たいしたものではない、さほどの価値が無いもので
 あるが、棚を埋めるために買ってやった」とか「こんなものでも
 買ってゆく、物を見る目のない客もいるだろうから買ってやった」
 という気持ちが心のどこかに潜んでいることを表しています。

  このような購買担当者がいる会社は、自社のお客さんに対して、
 「たいして価値の無いものを承知で提供している会社」であると
 いうことができるのです。


  売り手側にとって見れば、こんな買い手でも大切な売上計上先
 ですから、ついついおだてたりゴマをすったりして取引を成立さ
 せようとしてしまいます。

  しかし、そういう取引先は長い目で見れば安全な取引先とはい
 えません。お客さんに「たいして価値が無いもの」を提供してい
 るという本心は、いずれ見抜かれてしまうものだからです。



  「お買い上げくださいまして、ありがとうございます」と言っ
 た後に、お客さんから「うん、どうもありがとう」という返答が
 返ってくる商売、それが「殿様商売」です。


  売ってあげてもまったく感謝されない商売なら、いますぐやめ
 た方がいい。そういう取引先から永続的な利益を上げることはで
 きません。

  「なにを提供すれば売った相手に感謝されるのか」を考えると
 いうことがビジネスそのものであると言うことができます。



  反対に、あなたの会社の仕入れ担当者の態度にも注意を払って
 ください。

  購買や仕入れを実施したときに、仕入先に対して「どうもあり
 がとう」と言えているでしょうか?

  もし、いつも「買ってやってる」という尊大な態度をとってい
 るとしたら、その者はたいしたものを仕入れていない = たい
 した仕事をしていない と見なすことができます。


  「ああ、売ってくれてどうもありがとう」と言える様な商品を
 見つけてきて、交渉して、仕入れてくることが、仕入れ担当者の
 仕事ではないでしょうか。

--------------------------------------------
 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


  本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
 限りにおいて、引用・転載は自由です。