タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


   <本日のツボ235>
     『実態バランス』

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<ツボの説明>

  中小企業といえども、最低一年に一回は財務諸表を税務署と銀行
 に提出しています。

  ほとんどの企業では、納税申告用に作成した財務諸表をそのまま
 銀行説明用にも使っています。つまり同じものを見せているという
 ことです。

  納税申告用に作成する財務諸表というものは、税務署が徴税に
 都合が良いように勝手に決めた会計ルールに従って作成されるもの
 です。そのため、それが企業の実力を正確に示しているものでは
 ない可能性があるのですが、現実にはその税務会計だけを行なって
 いるという会社がほとんどです。

  中小企業は経営者とオーナー(つまり株主)が同一であるケース
 が多いので、株主に対してできるだけ正確な情報を提供するという
 視点が生じにくいことも一因ですが、それ以前に、中小企業には
 複数の方法で会計処理を行なう人手もスキルもなく、税務会計以外
 の手法で会社の実力を測ることの意義が一般化されていないという
 現状があります。

  したがって中小企業においては、減価償却を(税法で定められた
 耐用年数を使わずに)実態に即した形で行なったうえで、決算時に
 繰り延べ勘定を用いて調整するといった、比較的簡単な方法すら
 行なわれていないのが実情です。


  一方、銀行の側はというと、このような税務会計に基づいて作成
 された財務諸表を、そのまま取引先企業の評価・管理に使用する
 ことができない状態になっています。

  金融機関では、先のバブル経済時に無分別な不動産担保融資が
 大きく膨らみましたが、バブル崩壊後、この担保不動産の価値が
 実際にはいくら程度のものになったのかを正確に査定する必要に
 迫られたためです。不良債権の算定・引き当てというヤツです。

  その後現在に至るまで銀行は、取引先から入手した財務諸表に
 手を加え、「実態バランス」と呼ばれる修正版財務諸表を作成した
 上で相手を評価・査定するというやり方を継続しています。


  「実態バランス」を作成するための具体的な手法は、主に金融庁
 の「金融検査マニュアル」にのっとっているものと思われます。

  これは、不動産を実態に即した評価額に見直すことのほか、有価
 証券や営業債権、棚卸資産などといった資産も、より実態を反映
 した金額で評価し直すことを求たものです。

  中小企業側としても、こういった銀行の考え方にある程度なじ
 んでおかないと、融資の交渉などの際にいつまでたっても銀行と
 話がかみあわず、資金繰りにやたらと手間取るといった事態が起り
 得るといえます。


  実は昨年8月に「中小企業の会計に関する指針」というものが
 制定されています。
  これは、税理士・公認会計士の各団体と中小企業庁が別々に出し
 ていた3つの中小企業向け会計指針を合体させ、新会社法に対応
 させたものです。

  この指針に従って財務諸表を作成する中小企業を対象としたクレ
 ジットスコアリングモデル型事業融資商品なども開発されてきて
 いるし、会計基準を世界の標準的な基準に合わせてゆくという流れ
 は株式公開会社においてはすでに規定路線です。よって、「実態
 バランス」を重視した管理会計手法への関心を高めておくことは、
 今後中小企業経営者にとっても必要なこととなってきそうです。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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