<本日のツボ128>
『一律な施策では無効』
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<ツボの説明>
大企業と中小企業では、一律な規制を適用するのが妥当では
ない場合があります。
職位の違いによる立場の差が、中小企業の場合大企業ほど明確
でない、つまり中小の場合会社と従業員という関係の区分があい
まいなことが多いからです。
従来型の制度には、このような点には配慮されず、なにしろ一
律に強制されるものがあります。
例をあげてみます。
ひとつは産業医の選任を強制する制度。
50人以上の労働者を常時使用する事業場は、産業医というも
のを選任して届け出なければいけない。
もう一つは、健康診断の実施を強制する制度。
常時使用する労働者がいる事業所では、健康診断を実施して結
果を届け出なければならない。
どちらも労働者の健康のための制度(法律)ですが、よく考え
ると、「なぜコレが企業の義務なの?」という疑問にぶつかります。
健康相談や健康診断などの保健サービスの必要性は個人が判断
してよい問題です。
ただ、労働者の健康は会社にとってもその生産性を左右する問
題であるし、仕事の内容が労働者の健康に影響を与える可能性も
否定できません。
しかし、そういう場合は企業が一定の費用負担をして、個々の
対応策の内容については個人の裁量に任せるとするのが合理的だ
と思います。
産業医の委託費用に年間100万円、健康診断の実施に1人あ
たり8000円かかっているならば、会社はその分を福利厚生費
として支出し使い道は労働者個人にまかせる。「人間ドックを受
けるのも良いし、旅行や遊興費に使っても良い」とした方が、よ
ほど健康的だと考えられます。
こういう制度に直面すると、官僚独特の「一般庶民は愚かで知
識が無いから、優秀なものたちが制度を作って強制しないと自分
たちの健康管理などできない」という考え方と、「医師会という
圧力団体への利益誘導」という政治的思惑がよく見えてきます。
こういう人たちと、こういう人たちの考え方を疑問にも思わな
い(産業の実体を知らない)「有識者」というメンバーが制度を
作ってしまうわけですから、実効性がある政策というものはなか
なか出てこないのです。
私の工場では、委託した「産業医」に毎月8万円の委託料を払っ
ていましたが、その「産業医」が工場に来たことは一度もありま
せんでした。ようするに、ただ単に名前を貸して産業医免許を届
出用にコピーさせるだけでそれだけの収入になるのです。
健康診断は毎年行なっていましたが、肝硬変や肺ガンによる死
者がでました。
また、自身の健康管理に積極的な人は、会社が行なう健康診断
とは別に、自腹で人間ドックを受診していました。
これでも私は「労働者の保健に対する事業主責任」を果たした
ことになってました。制度上は。
こんなことも結構ストレスになったものです。
「自殺防止は国や企業の責任」でも良いのですが、我々産業の
側が自発的に取り組む姿勢を見せないと、また「産業カウンセラー
の選任義務」とか「地域XX推進センターの新増設」などという
効果が無くてコストがかかり、一部業界に利益誘導されるだけ、
という、従来と全く同じ制度ができてしまいます。
こんなことを繰り返していたら、この国の制度的な不合理さや
未来の不確実さへの不安がますます高まってしまいます。
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アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史
本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
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