タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


 <本日のツボ191>
    『調和と創造性』

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<ツボの説明>

  「さいたま市」という市があるのをご存知ですか?

  埼玉県の3市(浦和・大宮・与野)が合併してできた新しい市
 の名前です。


  大宮市は「新しい市の名前は大宮市にしよう」と提案したそう
 ですが、浦和と与野は「それでは大宮に吸収されたような印象を
 もたれてしまうからイヤだ」と反対したそうです。

  「埼玉市」という名称も候補になったそうですが、行田市という
 ところが「埼玉という地名のルーツは我が行田市内にあるから、
 埼玉市という名称を使ってはいかん」と横槍を入れたとか。

  結局「さいたま市」に決定したわけですが、様々な問題に配慮し、
 最も差し障りのない名称が選択されたようです。

  「軋轢を回避して調和を重んじる」という価値観の所産です。

  地名のために、地域内や近隣との間に感情的なしこりが残ったり
 軋轢を生んだりするのはまことにつまらぬことですから、この価値
 観は正しいといえます。

  この新市名のもと、さしたる問題もなく、巨大な新市が埼玉県の
 県庁所在地として順調に機能し始めています。


  一方、新しい地名を決めるのだから、もっとアピールできるもの
 にすればよいのに、という議論があります。

  しかし「アピールできるもの」というのはそれこそ、「伝統」や
 「斬新さ」「意気込み」「歴史的イメージ」「先進的イメージ」
 などと多種多様であり、人によってどれに価値観を見出すかが
 異なっててくるものです。

  よって「公募」などを行なった場合、まことにたくさんの候補が
 できてきます。


  なかにはすばらしい創造性によって生み出されたものもあるに
 違いありません。

  だが、「すばらしく創造的なアイディア」は、議論の過程で葬り
 去られてしまいます。

  なぜなら、ベースとなる価値観が万人共通のものではないからです。

  万人に認められる思想や価値観というのは、ある程度の普遍性が
 あって当然ですから、どうしても「創造的」とか「斬新」という
 ところとは対極に位置してしまうのです。


  そう、創造的なものを葬り去ってしまう という機能が、日本的
 民主主義には備わっているのですね。

  「地名を決める」という意思決定は、ほとんどの場合地方議会など
 において日本的民主主義の手法で行なわれることになると思います。

  ですから、役所や議会の合議によって決めざるを得ない市の名称など
 が「さいたま市」のような結論になるのは、至極当然なことなのです。


  企業内においても、伝統的な集団意思決定に慣れきってしまって
 いる場合、そこに「創造性」を求めるのはきわめて困難です。

  そういう場合「社外のクリエーターに一任する」というのも一つ
 の選択肢です。


  「外部委託」したのかどうかは知りませんが、「アルカディア」
 という地名が実在します。

  山形県米沢市内の町名です。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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