<本日のツボ193>
『権力と富の二兎を追うもの』
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<ツボの説明>
「人の世の立派な職業の中で、商業ほど武士とかけ離れたものは
なかった。日本では商業は士農工商の職業分類上でもっとも下の
地位に置かれていた。武士はその所得を土地から得ていたし、その
気になれば素人農業に従事することもできた。だが、武士は銭の
勘定ごとは徹底的に嫌っていた。
なぜこのような配慮がなされたかを私たちは知っている。それは
モンテスキューが明らかにしたように、貴族を商業から遠ざけて
おくことは、富が権力者に集中することを防ぐための誉められる
べき政策だったからである。権力と富の分離は、富の分配をより
公平に近づけることに役立った。『西ローマ帝国最後の時代』の
著者であるディル教授は、ローマ帝国衰亡の原因が、貴族が商業に
従事することを許し、その結果、少数の元老の家系が富と権力を
独占したことによって生じたことを教えてくれている。」
〜 「武士道」 著:新渡戸稲造 訳:岬龍一郎 〜
タイでクーデター騒ぎが起こったが、正直「やれやれまたか」と
お感じの諸兄が多いことと思う。
タイのタークシン首相は国家警察中佐という前歴を持つが、武士
というよりは商人だった。
華僑の性分からか、一族に富を集中させることへの執着が異常
に強く、そのことは以前から批判を受けていた。
ということは、「国と国民のために為政を正すのだ」という
クーデター実行者側の言い分は正しいかもしれない。
だとすれば、今回の騒ぎによって、タイという国のカントリー
リスクは高まらない といえる。
「為政者とその縁故者に権力と富が集中する」という現象は、
お隣の超大国で顕著だったが、そこにはそれを正す武士は存在
するのだろうか?
二兎を追うものの運命は「ローマ帝国」が一つの前例である。
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アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史
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