タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

  2006年9月21日


 <本日のツボ193>
   『権力と富の二兎を追うもの』

-------------------------------------------------
<ツボの説明>

  「人の世の立派な職業の中で、商業ほど武士とかけ離れたものは
 なかった。日本では商業は士農工商の職業分類上でもっとも下の
 地位に置かれていた。武士はその所得を土地から得ていたし、その
 気になれば素人農業に従事することもできた。だが、武士は銭の
 勘定ごとは徹底的に嫌っていた。

  なぜこのような配慮がなされたかを私たちは知っている。それは
 モンテスキューが明らかにしたように、貴族を商業から遠ざけて
 おくことは、富が権力者に集中することを防ぐための誉められる
 べき政策だったからである。権力と富の分離は、富の分配をより
 公平に近づけることに役立った。『西ローマ帝国最後の時代』の
 著者であるディル教授は、ローマ帝国衰亡の原因が、貴族が商業に
 従事することを許し、その結果、少数の元老の家系が富と権力を
 独占したことによって生じたことを教えてくれている。」

  〜 「武士道」 著:新渡戸稲造 訳:岬龍一郎 〜


  タイでクーデター騒ぎが起こったが、正直「やれやれまたか」と
 お感じの諸兄が多いことと思う。

  タイのタークシン首相は国家警察中佐という前歴を持つが、武士
 というよりは商人だった。

  華僑の性分からか、一族に富を集中させることへの執着が異常
 に強く、そのことは以前から批判を受けていた。

  ということは、「国と国民のために為政を正すのだ」という
 クーデター実行者側の言い分は正しいかもしれない。

  だとすれば、今回の騒ぎによって、タイという国のカントリー
 リスクは高まらない といえる。


  「為政者とその縁故者に権力と富が集中する」という現象は、
 お隣の超大国で顕著だったが、そこにはそれを正す武士は存在
 するのだろうか?

  二兎を追うものの運命は「ローマ帝国」が一つの前例である。

-----------------------------------------------
 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


  本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
 限りにおいて、引用・転載は自由です。