タイトルロゴ大山祐史の経営コラム



   <本日のツボ250>
     『囚われの身』

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<ツボの説明>

  キャプティブ価格戦略 という値決めの方法があります。

  キャプティブ(captive)は、捕虜、とりこ という意味。

  一度買ったら囚われの身になったも同然で一生搾り取られる、
 といったような意味です。


  一番わかりやすい例はパソコンプリンターです。

  パソコンプリンターはビックリするくらい安いですよね。
  で、インクカートリッジやトナーはビックリするほど高い。
  それでもインクが無くなりゃしかたがないから買いますね。
  インクを3〜4回取り替えると、本体と同じくらいの金額に
  なってしまいます。

  パソコンプリンターは、あまりそれを使う機会が無く、デザイン
 がカッコいいヤツを持っているだけで満足と言う方には非常に
 お値打ちですが、毎日ジャンジャン使っている人にとっては、高く
 ついてしかたがないという、ちょっと変わった商品です。


  メーカーさんにとっては、プリンター本体の利益率はほとんど
 無いか、場合によっては赤字かもしれません。それでも広告費を
 たくさん使って宣伝し、量販店にもリベートをいっぱい払って、
 シェア争いにしのぎを削っています。

  本体で投資した分を消耗品であるインクカートリッジで取り戻す
 という構図が明確なビジネスモデルです。

  最初に販売する本体の価格は赤字覚悟で安く設定する。そして
 その本体の使用に付帯するサービスや消耗品等のランニング収益
 によって、本体への投資を回収する。したがって、シェアが高けれ
 ば高いほど利益が大きくなる。
  これが「キャプティブ価格戦略」です。


  ソニーのゲーム機事業(SCEの事業)も、この戦略に近い
 ところがありました。

  ゲーム機本体であるプレイステーションと、その心臓部にあたる
 専用半導体の開発には、莫大な費用がかかります。
  それをソフトの販売で取り戻すというのが従来からのパターン
 だったわけです。

  今回のPSVでは、生産体制がうまく立ち上がらず、発売当初の
 供給がうまくいっていないようです。価格も「1台売るごとに2万
 円の赤字」などと言われているにもかかわらず、ゲーム機としては
 高めです。

  ただ、PSVそのものの出来が悪いわけではなく、「ソフトで
 回収する」という戦略が誤っている訳でもありませんので、この
 事業がつまずくとすると、何か他の要因があるはずです。

  もしもこの先、ソニーのゲーム事業に大きな問題が発生すると
 すれば、それはPSVの事業計画を策定した経営陣が、その事業
 計画の振れ巾を小さく見すぎていたためでしょう。

  このような、大きなハードウェア投資+市場浸透価格での発売
 →大きなシェアの確保→ソフト販売での収益確保 というビジネス
 フローから想定できることは、各段階にタイムラグが存在するため
 に、各フェーズでの計画と実績のずれが次のフェーズで増幅される
 可能性があることです。

  このような中で計画の振れ巾を過少に見込んでしまうことは、
 「甘すぎた読み」という結果論を招いてしまう元凶となりえます。


  中小企業の事業計画では、投資の回収は「最悪の場合でもチャラ」
 という読みの下で行なわなければなりません。「最悪の場合3億円
 の損失」などという計画では潰れてしまいますから。

  過去の成功体験に「囚われた」状態で作成した事業計画は、下への
 振れ巾を小さく見すぎてしまう恐れがありますので要注意です。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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