タイトルロゴ大山祐史の経営コラム



 <本日のツボ326>
      『ランチ』

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<ツボの説明>

  夜だけの営業を続けていた飲食店の経営者が「ランチ営業」を
 やりたいと言ってきた。

  こういう場合の問題点は2つ。


  一つ目は営業時間、というか労働時間の問題。

  夕方5時開店だった店を正午開店に変更するわけだから、単純に
 考えると営業時間が5時間長くなる。その分睡眠時間などの私生活
 が削られることになるが大丈夫か?

  「ランチ営業の後に一旦店を閉めて休憩するから大丈夫」という
 考えもあるが、現実的にランチ営業を行なっている店では、午後の
 休憩時間も片付けと夜の仕込みに追われて休憩になっていないと
 いうケースが非常に多い。
  これでは身体が持たないので、夜の開店を午後6時からにずらし
 ているところも多く見られる。


  二つ目は、ランチ営業の効果という問題。ランチ営業することで
 業績が好転するのかということ。

  飲食店にとってランチは過当競争の分野であり、価格的に手ごろ
 なメニューにしないとお客さんが来ない。

  安めの価格設定で営業すると、忙しいわりに利益が残りにくい。
 睡眠時間を削ってがんばっているのに、なんだかちっとも儲かって
 いるという実感がわかない。実際に利益が増えない。

  こうなってしまうのは「なぜランチ営業をするのか」という目的
 の設定があいまいなためだ。

  今まで夜だけの営業でやってきた飲食店というのは、値段では
 なくて味で勝負してきたはず。それなのに、ランチ営業を考える
 ときになって突然勝負の仕方を変えてしまう。
  これでは何のためのランチ営業かわからない。


  はっきり言おう。このような店にとって、ランチ営業とはズバリ
 夜の営業のための宣伝活動なんだ。

  だから、夜の営業内容、店のイメージやコンセプトといったもの
 とマッチしないランチ営業など、やっても意味がない。

  「夜のメニューはもっと良いんだろうな。今度は夜に来てみよう」
 と思わせるのが目的。

  夜のコンセプトとマッチしない激安ランチを提供すると、ランチ
 のお客さんがその店に対して抱く期待は「安くて腹いっぱいになる
 ところ」となる。

  そのお客さんが夜来店してくれたとしても、抱いている期待は
 同じもの。そしてそのお客さんの感想は「なんだ、ちっとも安く
 ないじゃないか」となってしまう。

  このお客さんが、夜の営業に再び来てくれることは、ない。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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