タイトルロゴ大山祐史の経営コラム


 <本日のツボ343>
   『フロントエンドの権限』

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<ツボの説明>

  サービス業の成功事例には、最近ある共通点が見られる。


  サービス業の中で実際にサービスを提供するのは、大抵の場合
 人間である。

  人間と人間の接点で「サービス」という付加価値が生まれ、そに対して
 支払われる対価が売上になるわけだから、この接点部分の価値がその
 ビジネスそのものの価値となっている。


  この接点部分のことを「フロントエンド」という。

  一方、サービス業の仕事の中で顧客と接触する機会がほとんどない
 部門のことを「バックオフィス」と呼ぶ。

  そしてサービス業の成功モデルでは、このバックオフィスとフロントエンド
 が連携してバリューチェーンを形成する仕組みがしっかりと構築されている。

  お互いの役割が明確にされていて、顧客満足の最大化のためにやるべき
 ことが明らかになっているといっても良い。


  さらに特徴的なことは、これらのバリューチェーン全体をコントロールする
 権限は、基本的に「フロントエンド」の側が握っているということである。

  たとえばある高級旅館では、一人で宿泊するお客さんが遺影を持っていた
 場合、夕食に二人分の料理が提供されるという。
  蔭膳の無料サービスである。

  フロントエンドを担当する仲居さんが遺影に気づき、「このお客さんは
 故人との思い出を偲び二人で旅をしている」ということを認識した場合、
 仲居さんには調理場に対して二人前の料理を用意するよう指示する権限が
 あるのである。


  反対に、フロントエンドとバックオフィスの間に断絶がある場合、付加価値
 の生産を効率的に行うことができずサービス業としての価値を高めることが
 できない。

  遊園地のローラーコースターがメンテナンス部門の怠慢により事故を
 起こしたケースなどは、施設管理を担当するバックオフィスが顧客満足を
 生み出すためのバリューチェーンから切り離されていて、「コスト削減」や
 「管理工数低減」などといった自分たちだけの都合に基づいて職務を
 行なっていた結果であるということができる。

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    アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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