タイトルロゴ大山祐史の経営コラム




 <本日のツボ369>
    『第5次医療法改正』

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<ツボの説明>

  病院・診療所などの医業者の多くは医療法人という法人格を取得して
 いますが、公益性を求められている医療法人といえども、収入と支出の
 バランスの上で経営されている組織ですから、院長さんや理事長さんたち
 は、会社と同様にコンプライアンスを重視した経営を求められています。

  そうした中、今春改正医療法が施行されました。

  改正の目的は

  1.医療計画制度の効率向上
  2.地域や診療科による医師の偏在(医師不足)への対応
  3.医療安全の確保
  4.医療従事者の資質向上
  5.医療法人制度改革
  6.患者や社会への医療情報提供の推進(情報開示)

 といった項目を柱としています。

 3〜6を見てわかるとおり、一般の企業と同様、ガバナンスやコンプライ
 アンスなど、組織が社会的責任を果たす上で重要な価値観を担保するために
 今回の法整備が行われた形となっています。


  しかしながら、医療従事者はみな多忙であり、法律のつくりというのは
 必ずしもそれを適用されるものにとって親切でわかりやすいものとは
 なっていないことから、医業経営に従事する方々から我々経営コンサル
 タントに対する問い合わせが非常に多くなっています。

  具体的には、来春までに上記のような改正趣旨にのっとった定款改定を
 行って都道府県に届け出なければならないのですが、多くの医療法人経営者
 にとって「定款の作り変え」などという作業はまったくなじみの無いしろ
 もので困っているなどという例があります。

  さらに、今改定によって「解散時の財産分配は出資持分比率による」
 ことを規定している医療法人(現状、大部分の医療法人がこれに当たり
 ます)は設立することができなくなったことなどが、わかりにくさに拍車
 をかけています。

  医療法人は公益性が高い法人であり、利益の蓄積を建前としないこと
 から、株式会社で言うところの「配当」にあたるような行為を全面的に
 禁止しようという趣旨の改正です。

  従来から医療法人は利益留保金を出資者に分配することは禁じられて
 いました。まさしく配当行為だからです。しかし旧法では、解散時に法人を
 清算して、残ったお金を出資者が山分けすることは認められていたのです。

  経済界からの「株式会社が病院などの医業経営に参入することを認めて
 ほしい」という要望に対して、既存の医業者らは「医業経営は収益事業で
 はなく公共サービスである。よって利益の最大化と出資者への配当を
 主たる目的とする株式会社は、その経営にはそぐわない」との理論に基づき
 拒否し続けてきました。

  そのような経緯から、たとえ解散時であっても医業経営によって蓄えた
 利益を出資者に配当するような行為を認めることは、その矛盾を隠し切れ
 ない問題となっていたのです。


  さらに、「安全管理体制の構築」や「医療情報の開示」といった義務が
 追加されたこともあって、病院経営はますます複雑なマネジメントを要求
 されるようになりました。

  そのようなわけで、定款変更ひとつにしても留意しなければならない
 事項が多くなっており、院長先生には手におえない懸案となってしまって
 いる医療法人が多くなっているのです。

  とはいえ、医療が停滞してしまうことは社会に対する悪影響が大きい
 ですから、こういった法改正に対応するための戦略策定や実務に関しては
 最優先で支援しています。


  医療機関に限らず、一般の企業でも法改正による権利・義務の変化に
 無頓着でいると、思いがけぬ困難に突然ぶつかってしまい、最悪の場合
 事業活動が停止してしまうことさえあります。

  実際、今回の医療法改正でも罰則規定の強化改訂があり、義務違反に対
 しては従来の「注意喚起」よりも踏み込んで、「業務停止」や「認定取消」
 といった行政処分も行えるようになっています。

  コンプライアンス管理は益々重要な危機管理項目になっているという
 ことなのです。

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     アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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