<本日のツボ52>
『ドツボにはまること』
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<ツボの説明>
なぜ何度も繰り返して「安売りして売り上げを伸ばしてはいけ
ない」というのかというと、それをきっかけにドツボにはまって
いった会社がたくさんあるからです。
そのパターンを追ってみましょう。
小売店というのは競争が激しい業種で、大型店といえども常に
お客さんをひきつける手立てを打ち続けてゆかないと、競争相手
に出し抜かれてしまいます。
そこで「セール」や「目玉商品」という看板でお客さんの注意
を引き、お店に来てもらうようにします。
その上で、ご来店いただいたお客さんには、店内で目玉商品以
外の商品も買って頂けるような仕掛けを施して、なんとか利益を
確保をしようとします。
目玉商品は「客寄せのためのエサ」ですから、これだけを売っ
ていたのではほとんど利益は残りません。赤字覚悟で価格設定を
する場合さえあります。あくまでも、ほかの商品も併せて売り上
げを伸ばすことが主眼です。
そういう理屈ですから、店員さんは、目玉商品の販売に熱を入
れるということはあまりありません。赤字覚悟ですから、売るこ
とよりもできるだけ安く買い叩いて仕入れることに力を入れます。
この商品を供給するメーカーや問屋さんの側はというと、「セ
ールの目玉商品だからたくさん売れるだろう」という思惑で、安
い仕入れ価格を承諾してしまうことが多い。
メーカーも小売店もあまり利益をとっていないわけですから、
お客さんにとっては「お買い得」に感じます。消費者というのは
普通の買い回り品の場合、ほとんどこの「買い得感」を基準にし
て購買の意思決定をしています。したがって、この目玉商品は、
良く売れてしまいます。特に最初のうちは。
このような「量がさばける目玉商品売り」は、最初のうちはお
客様に喜んでいただけて集客がアップし、セールを成功に導きま
す。ですから、このやり方は1回で終わることはなく、半年ごと
に「またあれでいこう」という話になります。これを何回か繰り
返してゆくことになります。
メーカー側は、半年にいっぺん定期的に大量需要が発生するよ
うになるので、その品物の生産量を増やさなければなりません。
別の小売店へも、同じような安売り企画を使った集客を提案し
て、できるだけ年間を通じて大量に販売することを考えます。
こういった企画もの向けの大量需要に応えるために、「設備増
強」や「人員拡大」をして増産体制を整える必要がでてきます。
そしてこの増産体制が整ったころ、「同じ目玉商品では集客が
上がらなくなる」という現象が起こります。つまり、同じような
セールを打っても、以前ほどは売れなくなるのです。
しかし、増産体制ができあがってしまった今となっては、セー
ルへの投入をやめるわけにもいかず、以前よりもさらに安い納入
価格を提示して、セール品として採用してもらうための営業を続
けることになりまます。
セール品には「時間の経過とともに納入価格が下がり続ける」
という傾向があるのです。
この時期になると、全体の販売数量と利益の落ち込みをカバー
するために、あわててセール以外の定番売りを強化しようとしま
すが、このとき消費者は既に「この商品は半年に一回半額になる」
ということを知っています。
近い将来安いセール価格で買えることを知っていながら、あえ
て定番価格で買うお客さんは多くありません。
つまり、セール以外のときは完全な買い控え状態になってしまっ
ており、通常月の売り上げはどん底まで落ち込みます。
増産のために投資した資金は全く回収不能になり、返すことが
できない借金と余剰人員だけが残ります。
このように、堅実な売り上げを上げていた定番商品を、一時的
な大量販売の魅力にひかれて安売セールに投入してしまい、結局
まったく利益を上げることができない商材にしてしまうという例
がたくさんあります。
そしてこの商品が会社の主力商品だった場合、この会社の歩む
道は悲惨なものとなります。
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アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史
本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
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