タイトルイメージ



 <本日のツボ65>
   『手のひらを返す』

 ------------------------------------------------
<ツボの説明>

  永年取引を続けてもらっていた得意先から、ある日突然「今年
 はおたくからは買わない」なんてことを言われたら、だれでも大
 ショックを受けます。

  担当の営業マンは「手のひらを返したように冷酷に切られた」
 などといって嘆きますが、仕事ですから、翌日からは「来年はま
 た取り返してやるぞ」と気を取り直して取り組むことになります。


  このようなケースを分析してみると、「競争相手のほうが少し
 だけ価格が安かった」とかいう理由によって、お客さんの購買担
 当者が「少しだけ気が変わった」という状況であることがほとん
 どであることがわかりました。

  営業する側が「手のひらを返された」と感じているときでも、
 お客さん側の心の中の変化は、実はほんの少しなのです。

  でも、「ほんの少しだけ注文を減らすよ」というのは、実務上
 は大変なことなので、「おたくからは買わないことにする」とい
 うことになってしまった、ということなのです。


  こういうことは人間関係の上でもよくおこります。

  いままで何かと世話を焼いたり優しくしてくれていた先輩社員
 が、ある日突然冷たくなって、口も利いてくれなくなる。
  話しかけようとしても視線をそらされてしまい、わざと無視し
 ているかのように振舞われる。

  こんなときには、あまりにもそれまでとは正反対な態度への変
 化にとまどい、とても大きな疎外感や悲しみを感じてしまいます。


  実は、こんなときには悲しむ必要はまったくないのです。

  こういうとき、冷たくなった先輩社員の心の中で生じている変
 化は、決してそれまでと正反対のものではなく、ほんのちょっと
 したものであることが多いのです。

  今までどおりあなたに気を使って親切にし続けてゆこうか、そ
 れとも先輩後輩として少し距離を置いた方がいいのか、といった
 迷いが生じている程度のことであり、あなたに対する関心度は、
 今までと同じか、またはそれ以上であったりします。

  好きな女の子の気を引くために、わざと冷たく接する、などと
 いう心理に似ているところがあるのかも知れません。

  だけど、態度をちょっとだけ変化させるというのは心理的に難
 しいものなのです。
  なぜなら、態度を変えるということは、その人の心の中に生じ
 た変化を、周囲に示すために行なうものなので、ちょっとだけ変
 えたのでは気づいてもらえない可能性がある。気づいてもらえな
 いのでは変える意味がないですから、無意識のうちに、大げさな
 くらいに態度を変化させてしまうのです。

  カヌーで川をさかのぼっているときに、ちょっと行き先を変え
 てみたくなったのだが、進路を30度とか90度変えるのは大変
 なので、思い切って180度向きを変えてしまうのが一番楽だった
 という感じでしょうか。

  こうなると、周りにいる方にとっては「手のひらを返したよう
 に変わった」ように見えることになります。

  そういう意味では、「人間は手のひらを返したような正反対の
 変化が一番起こりやすい」ということもできます。


  そういう場面に遭遇したときというのは、相手は何らかのメッ
 セージを発信しようとしているわけですから、あわてずにその人
 が発信したメッセージが何であるのかを考えてあげると、案外簡
 単にまたもとの向きに戻ってきたりするものです。

--------------------------------------------
 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


  本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
 限りにおいて、引用・転載は自由です。